凡夫の手記

日々、感じた思ったことなど

初めて元号を跨ぐ時、初めての給料で初めて女性を跨いだ話

平成30年4月30日。平成最後の日に僕は童貞を卒業した。

思えばこれまで彼女もいたことがなく性経験もないまま、世間一般では青春と呼ばれる学生生活を過ごしてきた。中学生の頃は高校生になったら彼女ができるのかなと考え、高校生の頃は大学生になったら彼女ができるのかなとエスカレーターのような考えだった。そんな人間に彼女などできるはずもない。類は友を呼ぶだろうか友人達と酒を囲ってもそんな浮いた話はほとんどしなかった。ただただ日常や先生の愚痴を言い合ってそれはそれで楽しかった。

しかし、それと同時に危機感もあった。青春と呼ばれるこの時期にそのようなことを経験しないこと。それはつまりこんなことではないかと。
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平成という一つの時代が終わる。区切りをつけるため、風俗に行こうと決意した。そして、確かめたいことがあった。僕は恋愛がしたいのだろうか?セックスがしたいのだろうか?この謎を解明すべくソープランドへと向かった。

事前準備として、ソープへ行ったことがあるという知人へ連絡を取り、四日四晩、他の風俗との違いという初歩から気になった嬢の写メ日記まで調べた。あの数日で一番緊張したのがお店に電話するときだった。電話するのに部屋をぐるぐると何周歩き回っただろうか。

ボーイ「はい、店名です。」

僕「4月30日、○○○さんは大丈夫でしょうか?」(HPから空いてるのは確認済み)

ボ「はい、大丈夫です。その日だと‥4時が空いてます。どうなさいますか?」

僕「では、その時間でお願いします。」

ボ「送迎を希望しますか?直接いらっしゃいますか?」

何事も経験と思ったので送迎を希望した。

ボ「どの駅でお出迎えしましょうか?」

僕「上野で」

その後、待ち合わせ場所を詳細に訊いたため、ボーイから少しうざがられたが最後に、「風俗というものが初めてなのでお訊きしたいのですが、HPに書いてある入浴料以外の追加料金はないですよね?」と訊くと、優しい声で「ご安心下さい。HPに書いてある通りです。ご安心下さい。」と丁重に返答をもらい、やっと緊張の糸が緩んだ。

その夜は、クラス替え前夜のように緊張した。どんな人だろうか。不安と精一杯楽しもうという気持ちからその日はなにもせず床についた。

翌日、駅に向かいながら確認の電話をして、待ち合わせ場所に15分前に着く。行き場のない高鳴りを誤魔化すため、近くのコンビニで頭に何も入らないまま雑誌を読んでいた。約束時間を過ぎても渋滞のためか連絡は来ず、近くでは同業者の白いハイエースばかりが止まっていた。その後、店に電話しナンバーを聞き車に乗り込んだ。

10分ほど車窓の景色を見ながら、見知らぬ場所へ連れて行かれるドナドナな気分に浸っていると店に着き、タバコの臭いが染み付いた待ち合い室に通された。在籍嬢のカタログを手に取り、モザなしの顔を見ながらHPじゃモザイクだけど案外かわいいじゃんなどと考えていた。

 

名前を呼ばれた。

曲がり角のさきにいた、

その姿を見て僕は「パネマジって凄ぇ」と感心した。

 

「それじゃ行こ♪」と手を引かれ階段を登る。部屋の中をきょろきょろと見渡していると「初めて?」と声をかけられる。「風俗もセックスも初めてです。」「童貞かー久しぶりだねぇ」慣れた手つきで準備をする。「キスも初めて?」「初めてじゃないです。」「良かった。ファーストキスまで奪うと悪いから」ファースト性体験よりファーストキスの方が大事だという価値観が女性らしいと感じた。そうこうするうちにキスをされ、するすると下半身に手を伸ばし、ズボンの上からさすられた。程よく元気になったところで全部脱いでと指示され、ブラのホックを外してと言われた。両手で確かめるように外した。

その後、二人で体を洗いベッドに腰かけるとフェラチオになった。「これオナホの方が気持ちよくね」と思ったが、我が息子は適当に刺激を与えるだけで元気になる性質だ。「そろそろ出ます」嬢は急いで顔を背ける。射精した。

「最初なのにこんなに出ちゃってごめんねー♪」何を謝っているのかよく分からなかったが、嬢は出たそれを献身的にティッシュで拭いてくれた。「まだ、元気そうだね♪」2回戦だ。

 

コンドームを口で器用にはめた後、自分の上に跨り騎乗位となる。愚息を持ちながら腰を下ろしていく。嬢が喘いだ。「えっ、これ入ったの?!」何の実感も感触もなかった。上下運動が始まったが[気持ちよさ:オナホ>騎乗位>フェラチオ]という不等式を思い浮かべながら、目の前でわざとらしく喘ぐ彼女を眺めていた。そうこうしているうちになぜか愚息がしぼんできた。「出たかもしれないです。」「そんな感覚なかったけどなぁ。もうちょっとやってみるね。」しかし、しごけどしごけど勃たない。ゴムを外すと誰からも認知されなかった息子達が細い糸と共に垂れてきた。

 

「あーのど乾いちゃった。何か飲む♪」メニューを指さす。「じゃあ、麦茶で。」「オッケー♪」と返事をするとフロントに電話を掛けていた。飲み物の到着後、麦茶を飲んでいると「何でさっきから敬語なの?」不服そうに嬢が話しかけてきた。「初対面の人は敬語になってしまうんです。」「ふーーん、まぁいいけど」思い返せば、彼女なりに初めてを楽しんでもらおうという気遣いを無為にさせてしまったのかもしれない。だから童貞なのだろう。

話を聞くと毎年年末は、今年の内に脱童貞駆け込み需要があるそうだが今回の改元ではそのような需要はほとんどないそうだ。また、どうしてソープで働いているのか聞いてみた。今までデリヘルで働いていたが本番交渉などをしてくる客が鬱陶しく、どうせ本番やるならソープで働いた方が良くね?となりソープで働いているそうだ。「まあ、セックスは好きだからねぇ」これまでの献身的な態度や気遣い、彼女の横顔からプロフェッショナルな仕事の流儀を感じた。

 

浴槽にお湯を貯めながらもう一度体を洗う。貯まりきった頃に浴槽に入ると、マットの準備を始めていた。「そういえば、ザーメンって美味しいですか?」前から気になっていたことを聞いてみる。「不味いよねぇ、さっきも顔背けたでしょ」「やっぱり不味いですか。」「AVとかでやってるのはほんとよくやってるわ」やはりザーメンは不味いらしい。

「じゃあこっちに来て、あっ、足元気を付けて♪」バラエティーのローション相撲のように足元を取られながらAVでよく見るマットへうつ伏せになる。「いやー家でこんなことできないっすよ」「ソープのいいとこだね♪」と言うと、背中から覆いかぶさるように体を擦り付けてきた。普通に気持ちよいが、性的な気持ちよさは全くない。背中に性感帯がないのだろう。ただ、足の指まで丁寧に舐めてくれたのにはかなり驚いた。「仰向けになって♪」もう一度騎乗位となる。しかし、まったく元気にならなかった。やってみたかった正常位を提案してみる。それらしいところに当ててみるが入らない。「ここだよ」と案内され入れてみる。それらしき感覚があったのでそこから前後に動いてみると「あーできてるよ、できてる、できてる」と褒められ、前後運動の度にわざとらしく喘いでいた。しかし、それでも元気にならなかった。結局、嬢が「やばいやばい」と残り時間を気にしながら手コキで致してくれた。なんか申し訳ない気持ちになった。「90分で3回てどうなんですか?」「うーん、まあ普通だよ、童貞だと無茶苦茶出すか、全然ダメかの2択だから。だからちゃんと出してくれてよかった♪」分からないけどこの娘サービス良くないか?

 

後片付けが終わり部屋を出る。上ってきた階段を下り、曲がり角で最後のキスをして別れた。待合室でアンケートに答える。「恋人っぽかったですか?仕事っぽっかったですか?」すまんな、どっちも知らないんだ。と思いながら恋人ぽいと答えた。

 

店を出ると小雨降る夕方だった。店に入った前と後で僕は変われただろうか?少なくとも心拍数だけは変わっている。吉原の街を歩いた。キャッチに声をかけられるが、「もう終わったんです」と答えると別の店にもかかわらず「また、来て下さい」と言われる。いい街だ。散策していると、こんな騒がしい日に唯一の公園?で濡れながら、一人で酒を飲む中年男性がいた。未来の自分を見ているようだった。

初めて風俗に行った感想だが、恐らく僕は今後あまり風俗に行かないのではと思う。めでたく童貞から素人童貞へとクラスチェンジしたわけだがその儀式はあまりにもあっけなかった。恋愛がしたいのか?セックスがしたいのか?どうやら僕は前者のようだ。「性欲は一人でも満たせるが、愛欲は一人では満たせない。」そんなことは薄々感じていたが、今回の経験で「愛欲は一人では満たせない。また人形相手でも満たせない」そんな文言が辞書に登録されたようだった。

童貞が童貞たる理由は何だろう。きっとそれは童貞という肩書きではなく、女性経験が少ないことから由来する何かだろう。現に僕は彼女とうまく話せなかったように思う。少なくとも僕が彼女を楽しませることはできなかっただろう。童貞が素人童貞になったところで何も変わりはしない。そんな当たり前のことに改めて気づかせてくれただけでもありがたい。2万何千円の授業料だ。

 

恋人のいない人は理想が高いと言われる。それゆえに目の前の人を大事に出来ないのかもしれない。だから人とうまく話せず、人脈も広がらない。今まで遠くを見すぎていたかもしれない、青い鳥は近くにいるのかもしれない。そう思いながら濡れながら帰った。

凡夫