凡夫の手記

日々、感じた思ったことなど

ボルダンスキー展行って来た感想

最後の週末ということもありわりと賑わっていました。前情報全くない状態で行った感想はあんなに死、不安、悪夢のようなものを全面に押し出したアーティストがいたんだなという感想。

 

画質の荒い大量の顔写真や子供の夢に出てくるようなポップな悪魔や骸骨(アンパンマンに出てくるホラーマンのよう)は原始的な恐怖や不安を煽り、心臓の拍動と共鳴して点滅する電球の点滅や変化する自画像は作者自身の強烈な老いと不安を感じられずにはいられない。作者は子供の顔写真を多用するがそこに若々しさなどは感じられず、むしろこれから失っていくものの多さを我々に示すようだ。作者は胎児は全てを知っているが誕生と共に全てを忘れるというユダヤ教の思想に賛同している。それゆえにこのような表現となるのだろう。https://bijutsutecho.com/magazine/special/promotion/20001

 

このような退廃に襲われるが、撮影可能エリアへと移行すると少し毛色が変わってくる。今までは鬱屈とした死、不安を煽るが、この先は仏教的価値観で言うならば三途、地獄、来世が待っている。まずは幽霊の廊下の先にそびえるぼた山。いくつもの黒い衣服が積み重なり、1つの何かを形成しているようだ。展覧会の案内藁半紙を見ると、作者にとって衣服は主体を表しているようだ。つまり1つ1つの衣服は1人1人の人間を表す。光に照らされるそれは蜘蛛の糸に縋る罪人のようにも見える。
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個人的に一番刺さったのがアニミタス(白)。カナダの雪原に刺さったいくつもの鈴がぶら下がった細枝が映し出される映像は、これCGで作った方が楽じゃない?という思うほど幻想的、夢的、ゲーム的で面白かった。

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クジラとコミュニケーションを取りながら来世に行くと、見える黄金の海。地獄巡りからの極楽浄土かな?と思えたが、これはこれで幻想的で長い間みていた。

 

展覧会を通じてまず雰囲気作りが良かった。薄気味悪さ、夢らしさを演出するため冷房はかなり効いていたし、「考えるな、感じろ」系なので作品横にキャプションを載せず、案内用の藁半紙に載せたりなど、ボルダンスキーの雰囲気にはかなり合っていたように思う。ただし、導線ごとの作品紹介順ではなく、時系列ごとの作品紹介順で記載してあったため、観覧者が迷う点、展覧会の挨拶のボードが気づきにくい、見づらい場所にある点はうーんとなったが。

 

総じて、彼の世界観は完成度の高い子供時代の悪夢のようであり、良く言えばノスタルジックな非日常に浸り、恐怖に怯え謙虚になれた。面白かったので今後も追っていきたい。