凡夫の手記

日々、感じた思ったことなど

回想1-2

僕たちの通学路は田園地帯だったので、田植えの時期からコンクリートの用水路にはピンクの禍々しいジャンボタニシの卵がたくさんついていた。それを見て(いくらみたいな味がするのだろうか?)と小さなころから妄想していた。なので、友人達と笑いながらそんなことを話したところ、食ってみろよと囃したてられた。売り言葉に買い言葉、兼ねてからどうせ食べたかったしと「じゃあ、食ってみるわ。」「じゃあ食えよ」「嘘つくなよ」「馬鹿じゃねーの?」等々の言葉を受けた。その辺に落ちていた枝で卵を突き刺す。かなり固く枝がしなり折れた。短くなった枝でえぐるようにほじると、中からどろっとした血のような液体が流れ出た。枝の先についたそれを指で掬い舐めてみる。不味かった。チョロッと舐めてその後ずっと唾を吐いていた気がする。そんな様子を見て友人達はこいつまじでやったぞと引いていた。そんなことがあった数日後、僕たちは職員室内の会議室に集められた。どう話がいったのか僕が同級生たちに無理矢理タニシの卵を食べさせられたことになっていた。僕は周りの大人達が何故怒っているのか分からないまま、どうでもいいので早く帰りたいから首を縦に振っていた。友人達と職員室から出ると、「お前が勝手に食べ始めたんだろ!」と殴られた。
あぁ、何てことをしたんだろう。何ていい加減にその場をやりすごそうとしたのだろう。言い訳でもいい何か言わなければ。そう思いながら殴られた僕を置いて友人達は廊下を歩いていった。初めて他人を無神経に傷つけた記憶だ。